複雑ネットワーク上の相転移現象
複雑ネットワークとは

私達が住むこの世界には、WWW(World Wide Web)や友人関係、食物連鎖など様々なネットワークが存在しています。これらのネットワークの構造は、 従来の物理学で扱われてきた格子のような均一構造ではないことは明らかです。近年、このような複雑なネットワークの構造に対する関心が高まっています。
現実の複雑なネットワークには、スケールフリー性・クラスター性・スモールワールド性などの、いくつかの共通した性質があることが分かってきています。 私達の目的の1つは、これらの性質を再現するような数学的なモデルを作成することです。ネットワークへの数学的アプローチは、数学の分野ではグラフ理論により 古くからなされていました。最近では、WWWなどの大規模なデータ収集が可能なネットワークの出現が、モデル作成の大きな助けになっています。
さらに、もう一つの目的は、モデル化したネットワーク上で起きる様々なダイナミクスについて調べることです。ランダムウォークや、パーコレーション(浸透現象)、Spin Systemなど、従来物理の分野で研究されてきた現象が、ネットワーク上では従来とは異なった振る舞いを見せることが指摘されています。私達は、統計力学の手法を生かし、様々なダイナミクスについて解析を進めています。

(文責:池田)

複雑ネットワーク上の相転移現象

磁性体のスピンモデルやパーコレーション理論などの相転移を伴う現象を考える時、 一般には2次元正方格子や3次元立方格子などの、各頂点が規則的に並んだいわゆる"格子"を思い浮かべますが、 各頂点が不均一な繋がりをした"ネットワーク"で転移を伴う現象を考えることもできます。
ある種の構造を持ったネットワークでは、格子系の、 無秩序相から転移点を境に秩序相へと相転移するシナリオではなく、 無秩序相と秩序相の間に中間的な相(臨界相)が現れるような転移を起こす事が知られています。 しかし、その臨界相での振る舞いについてはあまり研究がされていません。 そこで、臨界相の現れるネットワークで、かつ厳密解を解析的に求めることの出来るモデルとして階層格子上のパーコレーションを考え、 臨界相での系の振る舞いを調べています。

(文責:佐藤)

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