Jarzynski等式と揺らぎ定理

巨視的な系における平衡状態間の差異を表す量として、Helmholtz 自由エネルギーの差ΔFがある。熱力学第2法則は、2平衡状態間の遷移に要する非準静操作による仕事量WがΔFより大きく、準静操作による仕事量がΔFに等しいという事を述べている(W≧ΔF)。 しかし、系を微視的に扱うと第2法則に従わない稀な状況が実現する確率を導くことができる[1]。

今回、一定の操作に対して揺らぐ仕事量 (非平衡仕事)とΔFの関係を等号で与える、Jarzynski等式を紹介する[2]。この等式は自由度に関係なく成立するが、主に揺らぎが顕著となるメゾスケールで用いられ、具体的現象としてRNA伸長に対する仕事量の揺らぎを紹介する[3]。 また、Jarzynski等式自体は[2]により単独で導かれているが、別の方法として、一般性が高く、かつ状態間遷移が決定論的であるとして導かれる詳細揺らぎ定理から、いくつか条件を絞りJarzynski等式を導く。 詳細揺らぎの定理の特殊性も併せて紹介する [1]。

[1]C.Jarzynski J.Stat.phys.98,77 (2000)
[2]C.Jarzynski Phys.Rev.Lett.78,2690 (1997)
[3]C.Jarzynski Eur.Phys.J.B 64,331 (2008)
[4]Gavin E.Crooks Phys.Rev.E 61.2361 (2000)

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