有限熱容量の高温熱源を利用する熱機関の最大パワー時の仕事


淹れたてのコーヒーをそのまま置いておくと、やがて室温まで温度が下がり熱平衡状 態となる。この時、コーヒーカップの上に熱機関を置いておけば、熱の一部を仕事と して取り出すことができる。では原理的に仕事はどれだけ取り出すことが可能であろ うか。
熱機関の物理学では、高温側の熱源の熱容量は十分大きく、温度変化はないと仮定さ れることが多い。一方、上のコーヒーの例のように実際には高温熱源は有限の熱容量 をもち、温度が変化し得る場合も多々ある。高温熱源が低温熱源と同じ温度になるま で熱機関を動かし続けた際に得られる仕事の最大値(最大有効仕事)は準静的極限で 達成され、エクセルギーと呼ばれている。
本発表では、有限熱容量の高温熱源から仕事を取り出すプロセスにおいて、熱漏れの ない理想的な場合には最大パワー時の仕事はエクセルギーの半分に、またその帰結と して最大パワー時の効率も準静的極限時の半分となることを線形不可逆熱力学の枠組 みを用いて一般的に証明する。これらの結果は、熱機関の作業物質の種類、輸送 係数や熱容量の詳細によらずに成立するため、(平衡)熱力学のような普遍的なもの であることを主張したい。

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