積み上げられた乾いた粉粒体系(dry granular system)の表面と水平面がなす角度は,
ある一定値よりも大きくなることができないことが観測から知られている.
詳細に観察すると,この角度は粉粒体系の表面に雪崩が生じない最大の角度である
始動角(the angle of movement)と,雪崩が生じた直後に現れる緩和角
(the angle of relaxiation)という2つの特徴的な角度を含んでいる.
この2種類の角度を総じて安息角(the angles of repose)と呼ぶ.
安息角は粉粒体系を収容する容器の形状に依存する.特に,本発表では
薄い円筒状容器における「厚さ」の変化に対する安息角の値の変化に注目した.
薄い円筒状容器における安息角の厚さ依存性を説明する連続体モデルが提唱され,
実験との一致が確かめられている[1].
しかしながら,このモデルからは文献[1]に先行して行なわれた薄いセルにおける
実験から見出された式とは明らかに異なった安息角の厚さ依存性が導かれている[2].
今回,円筒状容器についてのシミュレーションを行なった.
始動角および緩和角が厚さに依存してどのように変化していたか,結果を報告する.
[1] S. Courrech Du Pont, P. Gondret, B. Perrin and M. Rabaud, Europhys. Lett. 61 (4), pp.492-498 (2003)
[2] Y. Grasselli, H. J. Herrmann, Physica A 246 (1997) 301-312